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サミング・アップ 感想

サミング・アップ (岩波文庫)サミング・アップ (岩波文庫)
(2007/02)
モーム

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イギリスの作家を立て続けに読む。
良書といえる。訳も前半部は素晴らしい。後半の哲学や宗教、善などについての部分はやや退屈で冗長に感じたけれど、全体として苦痛なく読み進めることが出来た。

本書は、サミングアップという名の通りモームという20世紀前半のイギリスで活躍した作家が人間、人生、言葉、哲学などに対しての考えを要約したもの。

全体にとても落ち着いた調子で、高揚感はないけれど謙虚で素朴な語り口は心地良い。
挑戦的な言葉は少ないけど、かといって非凡ではない。

個人的に特に気に入った部分を二つ挙げたい。

劇場というものが、映画に取って代わられていく様に対してのモームの考察は非常に納得させられる部分が多かった。
かなり辛辣ではあるんだけれど、率直に劇場が映画に敗れ去っていく理由を述べている。
モームの主張を大雑把にいえばこんなかんじだ。
映画も劇も客の知性は大したことないやつが大勢見ているだけで、結局は新鮮さだけが常に問題とされる。
モームの考えでは、劇はむしろ古くからの韻なんかの味わい深さなんかが映画では表現できない部分だ。けれど新しさを求めてる大衆には古臭い韻なんて受け入られないという予想はあたり、やや古いスタイルを取り入れた新作は大衆には受けいられなかった。それで見切りをつけ、劇の世界から足を洗った。


もう一つは、細かい部分なのだけれど、リアリズムについて述べた箇所。
以下引用:
芸術家がリアリズムに大きな価値を与えたことはめったになかったことに気づく。芸術家は自然を形式的な装飾として用いたのであり、直接自然を写したのは、時々想像力のためか自然からあまりに遊離して自然回帰が必要に感じられた場合だけであった。絵画と彫刻の世界では、現実に肉薄するのは常にその流派の衰退を表わすものであったとさえ主張できるのかもしれないのだ。
絵画と彫刻をゲームに、現実(又はリアリズム)を3Dに置き換えれば、現在のゲームに関しての状況にぴったりあてはまる。
ゲームの世界では、3Dによって現実に近づけるのはゲームの本質から離れることになる。
横井軍平の発言でもなんらおかしくはない。


ドストエフスキーを唯一取り上げたところが、カラマーゾフのゾシマ長老のくだりが脱線として優れているという主張だったり、激しさはないのだけれど本当に楽しく読めた。
落ち着いたおじいさんの書いた本だけに、年をとってる人の方が楽しめるかもしれません。

テーマ : 書評
ジャンル : 小説・文学

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Author:夢念
よつばは、むてきだ。

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